“サービス”ではなく“体験”が選ばれる時代へ
診療科目や立地、設備などが似通った医療機関が増えるなか、患者が選ぶ理由は“サービスの差”ではなく、“体験の差”へとシフトしています。
「受付で安心できた」「先生の話し方が落ち着いていた」「会計までスムーズだった」など。
こうした“感じ方”の積み重ねが、再来院や紹介、口コミへとつながるのです。
UX(ユーザー体験)とは何か?
UXとは「User Experience(ユーザー体験)」の略で、「ユーザーがあるサービスや製品と接する中で得るすべての体験」を指しています。
医療現場で言えば、以下のような接点のすべてがUXに該当します。
・電話予約のしやすさ
・初診時の不安への配慮
・受付・看護・診察・会計など流れのわかりやすさ
・スタッフ同士の声かけや空気感
・院内の香り・BGM・清潔感
・診察後のフォローや手書きのひと言メモ
医療ブランディングにUXが必要な3つの理由
1. “感じたこと”はサービス内容よりも記憶に残る
どんなに正確な診断や治療を行っても、「冷たかった」「説明がわかりづらかった」と感じられてしまえば、信頼や評価は下がってしまいます。
“結果”ではなく“過程”の印象が、来院者の心理に大きく影響します。
2. 患者だけでなく“スタッフのUX”もブランディングになる
スタッフが働く中で感じる不安や違和感、または「この職場いいな」と思える瞬間も、ブランド形成に直結します。
働きやすさ・やりがい・共感が育つ環境は、離職率を下げ、患者への対応力も高めます。
3. UXは再現・改善ができる“仕組み”として設計可能
感覚や雰囲気だけでなく、「どの場面で何を感じさせたいか」「どこでつまずいているか」を言語化し、チェックできるようにすれば、組織的な改善が可能になります。
これらが“ブランディングの基礎”となります。
医療UXの視点で見直すべき接点の例
・Web予約や問い合わせの導線
・初診案内(紙/声かけ/導入動画)
・受付のアイコンタクトやトーン
・待合室での情報提供・BGM・座席の配置
・スタッフ同士のやりとりや雰囲気
・診療中の言葉選びと目線
・診察後の声かけ、フォロー体制
・アンケートやフィードバックの回収方法
まとめ:医療ブランディングの“本質”は体験の設計にある
選ばれる医療機関になるためには、“何をしているか”だけでなく“どう感じてもらうか”を設計する必要があります。
UXという視点を取り入れることで、理念やビジョンが「体験」として伝わり、“また来たい”“誰かに勧めたい”というポジティブで自然なブランドが育っていきます。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。