“どんな対応をするか”以上に、“どう対応するか”が問われる時代
災害時には、正確な対応だけでなく「その病院らしさ」が利用者や地域に強く印象づけられます。
慌ただしい現場の中でこそ、理念に基づいた判断や行動ができるかどうかが、組織の信頼力に直結するのです。
「理念を掲げているが、災害対応と結びついていない」「マニュアルはあるけれど現場に浸透していない」といった課題を抱える医療機関は少なくありません。
本記事では、理念が“実行される指針”として息づく災害対応マニュアルをどう設計し直すか、その考え方と実践方法をご紹介します。
理念を反映させた災害対応マニュアル再設計のポイント
01.「行動指針」としての理念を再確認する
・抽象的な理念(例:患者第一、地域と共に)を、具体的な災害時の行動に言語化
・例:「混乱の中でも、患者に声をかける」「高齢者の不安に寄り添う説明を徹底する」など
・職種別・場面別の“らしい対応例”を文章ではなく、対話やロールプレイで体感化する
02.マニュアルの中に“理念に基づく判断軸”を盛り込む
・全職員に共通する行動原則(たとえば「命の優先順位の考え方」「説明責任の持ち方」)を明文化
・物資が足りない、スタッフが足りないなど“想定外”への対応指針も、理念で補完
・「このときどうする?」という問いに対して、“理念に照らせば答えが出る”構造を作る
03.形式よりも“共有プロセス”を重視する
・マニュアルを紙で配るだけではなく、ワークショップや意見交換会を通して“自分ごと化”させる
・「理念と災害対応をつなげる一言」を各チームで考えるなど、現場参加型で再構築する
・新入職員研修でも「理念×災害対応」の項目を設けて早期に刷り込む
理念ベースの災害対応が、病院に与える価値とは?
・どんな状況でも“一貫した対応”ができる組織になる
→ 指示が届かない場面でも、理念を共有していれば現場判断の軸がぶれない
・「あの病院は安心できる」という地域評価が生まれる
→ 有事の対応が「この病院らしいね」と言われること自体が、ブランド構築に
・スタッフの迷いや不安が減り、心理的安全性が高まる
→ 判断に迷った時、「理念に立ち返ればいい」と思えるだけで、行動が前向きになる
災害対応マニュアルの設計・見直し時のよくある課題と対策
・「マニュアルに理念が書かれていない」
→ 各ページの冒頭に“この行動の背景にある理念”を添えるだけでも、行動の意味が伝わる
・「職員の間で“理念なんて非常時には関係ない”という意識がある」
→ 実際の災害ケースをもとに、「理念に沿って行動した事例」を共有する研修が効果的
・「マニュアルをアップデートできていない」
→ 毎年1回“理念チェック”の視点でマニュアルを見直す会を設け、経営と現場で再点検を
まとめ:非常時に“理念が生きる”組織は、選ばれる
災害は、理念の真価が問われる瞬間です。どれだけ掲げている理念が立派でも、それが行動や判断に現れなければ、意味を持ちません。
マニュアルの言葉を“理念に基づいた選択肢”に変え、職員一人ひとりが「うちの病院らしい対応」ができる環境を整えることこそが、これからの災害対策の本質です。
理念が判断軸として生きる病院は、非常時にも、普段と変わらず“信頼される存在”であり続けるでしょう。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。