“逃げる”だけでは、介護施設の訓練にならない
防災訓練は、災害に備えるための基本的な取り組みです。しかし、介護施設にとっての訓練は単なる避難動線の確認や消火活動の練習では終わりません。
要介護者の命・生活・尊厳を守るために、職員一人ひとりが「ケアの視点」で動けるかどうかが問われるのです。
本記事では、防災訓練を“ケアの学び”に進化させ、日常にも活きる研修へと変えていくための工夫を解説します。
“ケアの学び”になる防災訓練の設計ポイント
01.「動線確認」ではなく「人を中心に置いた訓練」へ
・移動ルートや手順の確認だけでなく、「誰の不安をどう減らすか」「声かけは適切か」といった視点を重視
・職員だけでなく、入居者(や役を演じるスタッフ)の立場になって体験することで、“心の動き”にも気づける
・「物理的な安全」+「心理的な安心」が同時にケアできているかを評価軸に
02.ストーリー性を持たせ、“状況判断力”を育てる
・避難訓練に“トラブル要素”を加える(例:職員が1人いない/入居者が混乱している/突然の停電など)
・訓練を通じて「どう判断したか」を問い直し、マニュアルに頼らない思考の柔軟性を育てる
・「もし自分の家族だったら、どう対応したか」を考えるワークも効果的
03.訓練後の“気づき共有”を習慣化する
・訓練後に必ず「何を感じたか」「何ができて、何が難しかったか」を言語化する時間を設ける
・発言しやすい場をつくるため、ポストイット形式や小グループ発表などの工夫を
・共有された“声”を次のマニュアル改訂や環境整備に活かすことで、参加者の納得度が高まる
“ケア視点の訓練”が施設にもたらす効果
・判断力と共感力のある職員が育つ
→ 想定外の事態でも「今、この人にとって一番大切なことは何か」を考えられるように
・マニュアルに“心”が宿る
→ 訓練で得られたリアルな学びが、マニュアルやBCPに反映されることで“生きた指針”になる
・家族や地域からの信頼が高まる
→ 「ここなら安心」と思ってもらえるのは、“人を大事にする訓練”をしている施設
防災訓練のよくある課題と改善策
・「訓練が毎年同じで、マンネリ化している」
→ 年ごとにテーマを変えたり、ストーリーを設定したりして“思考型訓練”にシフトする
・「一部職員しか参加できていない」
→ 勤務帯に分けた小規模訓練や、動画記録+感想ワークシートによる代替参加などで機会を拡充
・「気づきが共有されても、次に活かされていない」
→ 共有内容を“改善リスト”にまとめ、管理職や委員会で月次フォローするサイクルをつくる
まとめ:“避難”ではなく、“ケア”を学ぶ訓練へ
介護施設にとっての防災訓練は、単なる手順確認ではなく、“人を大切にする姿勢”を磨く場であるべきです。
非常時こそ見える“らしさ”を育てるために――。
訓練を通して、ケアの本質を再確認し、職員・利用者・地域すべての信頼につながる時間へと進化させましょう。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。