“計画がある”だけでは、災害には強くなれない
BCP(Business Continuity Plan=業務継続計画)は、災害時に医療機能を維持するための最重要ドキュメントです。しかし、立派な計画を策定しても、それが現場に浸透していなければ、いざという時に機能しません。
「読まれていない」「理解されていない」「動けない」――この3つをいかに防ぐかが、BCPの実効性を高めるカギです。
本記事では、スタッフが主体的に関わり、実際の行動に落とし込まれるBCP運用の工夫を紹介します。
BCPを“行動に変える”ためのステップ
01.“現場の声”をもとにBCPを設計する
・策定は経営・管理部門だけでなく、各部署の現場スタッフと協働して行う
・「実際にその状況が起きたら、自分はどう動くか」を一緒に考えるプロセスが、理解と納得を深める
・医療スタッフだけでなく、受付・事務・清掃など多職種の視点を含めることで、実効性が格段に向上
02.職員向けに“使いやすい形”に再編集する
・原文のまま配布せず、役割別マニュアルやチェックリストなどに編集し直す
・図やイラスト、フローチャートを使って、直感的に理解できる工夫を施す
・「何を見れば、誰がどう動けばいいか」が一目でわかる資料を整備する
03.“伝える場”と“体験する場”をセットで設計する
・全体説明会のほか、部署別に小規模のレクチャーやケーススタディを行う
・実地訓練(避難・停電対応・トリアージなど)をBCPと紐づけて実施し、計画を「自分ごと」に
・OJTの一環として、新人にも早期にBCP教育を行う体制づくりが理想的
BCP浸透が、組織の“防災力”を底上げする理由
・スタッフの“安心感”が、冷静な初動を支える
→ 自分の役割が明確であればあるほど、災害時にも落ち着いた対応ができる
・医療機能の早期回復に直結する
→ 想定外の事態にも、基本動作が体に入っていれば、柔軟な判断が可能になる
・理念に沿った判断ができる組織になる
→ 「誰を優先し、どう動くか」の基準をBCP×理念で共有しておくことで、迷いの少ない行動へ
BCPのよくあるつまずきと改善策
・「BCPを読んでも内容が難しい」
→ イラスト・動画・寸劇など多様な伝達手段を活用し、職種・世代問わず理解できる形に工夫
・「定期的に見直しがされていない」
→ 年1回の訓練だけでなく、部署ごとの月例ミーティングなどにBCPを織り交ぜて更新習慣を作る
・「関係者の巻き込みが弱い」
→ 医師や管理職の“本気度”を見せることで、現場の意識も変わる。トップメッセージの発信が効果的
まとめ:BCPを“文化”に変えるには、現場の共感がカギ
災害時に強い病院をつくるためには、BCPを「誰かが読む資料」から「みんなが動ける仕組み」へと変えていく必要があります。
そのためには、現場スタッフの声を反映し、使いやすい形に落とし込み、体験を通して理解を深めていくプロセスが欠かせません。
“BCPを共有する文化”こそが、医療機関の信頼力と組織ブランドの基盤となっていくのです。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
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