災害体験を“語れる医療機関”は、信頼される
災害は、決して歓迎される出来事ではありません。しかしその中で得られた教訓や、実際に行った対応、スタッフの奮闘などは、その病院の信頼力を裏づける貴重なストーリーです。
単なる「大変だった出来事」で終わらせるのではなく、記録・共有・発信というプロセスを通じて、組織の価値として昇華させることができます。
本記事では、医療機関の被災経験を“施設価値”へ変えるための視点と工夫をご紹介します。
災害体験を価値に変える3ステップ
01.「記録する」:そのとき何が起きたかを事実として残す
・タイムライン形式での状況記録(停電発生/搬送対応/通信状況など)
・対応チームごとの行動や判断、困ったこと・工夫したことを記録するテンプレートを準備
・スタッフの主観的な感想や記憶も、後からの振り返りにおいて非常に重要な資源になる
02.「共有する」:職員間で体験を対話に変える
・記録した内容をチーム内で共有し、「何ができたか/できなかったか」を振り返る機会をつくる
・形式ばらない座談会や、写真・メモを使った振り返りワークも効果的
・共有の中から見えてくる「私たちの強み」「もっと良くできること」が次の備えにつながる
03.「発信する」:信頼を育てるストーリーとして外部へ伝える
・ホームページや広報誌で「災害時こう動いた私たち」という特集を組む
・地域向け説明会や講演会での事例紹介は、行政・住民との連携強化にも役立つ
・採用コンテンツや理念紹介ページに、災害対応ストーリーを載せるのもブランディング効果が高い
災害体験の発信が、医療機関にもたらす価値
・“言葉で語れる信頼”を獲得できる
→ 「災害時もこの病院はこう動いた」というストーリーは、抽象的な安心感を具体的に示せる
・スタッフの誇りやモチベーションを高める
→ 苦労や努力が“価値として認識される”ことが、離職防止や定着にも効果を発揮する
・理念を体現したエピソードが資産化される
→ 「理念に基づき、誰を優先し、どう動いたか」を共有することで、組織文化が明文化される
災害記録のよくある課題と対応策
・「災害時は記録どころではない」
→ あらかじめ“記録係”を決めておく、または音声・メモなど簡易な記録方法を運用する
・「職員が発信に対して消極的」
→ 「誰かを称える」スタイルで、個人の頑張りや連携をポジティブに伝える内容にすると参加しやすい
・「災害の話題は不安をあおるのでは?」
→ 不安ではなく、“備えと実行力”を示すストーリーとして再構成すれば、逆に信頼につながる
まとめ:“語れる経験”が、選ばれる医療機関をつくる
災害時の経験は、医療機関の理念・文化・行動力を象徴するリアルな証拠です。
だからこそ、それを“残し、語り、伝える”ことは、単なる記録行為ではなく、組織の価値を未来に手渡すブランディング活動でもあります。
「この病院なら、大丈夫」と思ってもらえる安心感は、語れる経験と、それを伝える力から育っていくのです。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。