「便利なはずのツール」が、現場で使われない理由
「業務が効率化できる」「記録が楽になる」──そう信じて導入したICTツールが、現場では「面倒くさい」「使いにくい」と敬遠されてしまう。
そんな経験はありませんか?
介護現場でのDXは、テクノロジーの性能ではなく、“導入の進め方”で成功が決まります。
本記事では、ICTが“使われる仕組み”として根づくための「共感される導入プロセス」について解説します。
“使われるICT”を育てる導入ステップ
01.スタートは“課題の共有”から
・「何が不便か」「どこに無駄があるか」を、現場と一緒に言語化するプロセスから始める
・経営目線での“業務効率化”ではなく、現場目線での“負担軽減”や“ミス予防”を軸に設計
・「このツールが“誰のどんな困りごと”を解決するのか」を明確にすると、導入の納得感が変わる
02.“試してから決める”文化をつくる
・1部署・1シフトなどの小規模導入からスタートし、「試す→振り返る→調整する」のサイクルを回す
・評価を職種横断で共有することで、「現場発の改善」としての浸透を目指す
・「完璧な状態で導入する」のではなく、「一緒につくるもの」という姿勢が信頼を生む
03.導入初期は“サポート設計”を手厚く
・「最初の1週間」を乗り越える仕掛けを。操作支援の“相談役”や“なんでも聞いてOKチャット”などを用意
・手順書だけでなく、1分動画や操作会の開催で「使いながら慣れる」設計を
・ICTリーダーを現場から選出し、習得状況を見える化するのも効果的
職員に選ばれるICT導入が、施設にもたらす価値
・“現場が主役”の文化が育つ
→ 一方的なシステム導入ではなく、「自分たちでよりよくしている」という自走型文化へ
・ミスやヒヤリの減少が、安心の提供につながる
→ 情報共有や記録の精度が向上し、利用者ケアの質も安定する
・採用・定着にも効果が広がる
→ 「働きやすく、声を聞いてくれる職場」として内外からの信頼が高まる
ICT連携のよくあるつまずきと改善策
・「現場に相談しない、結果、上層部が決めたツールが浸透しない」
→ 導入前の“課題ヒアリング会”で職員の声を吸い上げ、ツール選定に反映させる
・「覚えるのが大変、使うのが面倒と敬遠されがち」
→ マニュアルを簡易化+動画化し、“操作は直感でOK”な状態をつくる
・「成果が見えず、ただの“余計な手間”に感じられてしまう」
→ 導入前後の変化(時間削減、エラー減少など)を定期的に“見える化”して共有する
まとめ:“一緒に使う”という視点がICTを活かす鍵になる
ICT導入の成功は、機能や価格では決まりません。「このツールなら、私たちの仕事がもっと良くなる」と思えるかどうかにかかっています。
共感から始まり、現場の声で育ち、日常に溶け込むICTこそが、“使われ続ける仕組み”になります。
DXは導入ではなく、関係づくり。まずは「一緒に考えること」からはじめましょう。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。