「旅立ちのあと」を、どう迎えられるか
介護の最終章である「看取り」。
施設で最期を迎えるということは、家族にとっても、職員にとっても深い意味を持ちます。
「ちゃんと見送ってあげられたのか」「この選択でよかったのか」――
そんな思いを抱えた家族に対して、看取り後の寄り添いこそが、信頼と感謝を“記憶”に変える時間になります。
本記事では、“介護の卒業”を迎えた家族との関係性を丁寧に紡ぐための支援の工夫を紹介します。
看取り後の支援を“信頼の文化”にする工夫
01.“思い出と対話の時間”を設ける
・退所後1〜2週間を目安に、家族にお礼と様子伺いの連絡をする
・「○○さんのこんな笑顔が忘れられませんでした」など、具体的なエピソードとともに思い出を共有
・希望があれば面談の場を設け、対話の中で感情を整理してもらう“グリーフケア”の時間に
02.“言葉と形”で感謝とつながりを伝える
・看取り後のお手紙や写真、寄せ書きなどを“ありがとうの贈り物”として届ける
・「ご家族との関わりも、私たちにとって大切でした」という姿勢を言葉で伝える
・形式ではなく、“うちらしさ”がにじむやりとりを
03.“帰ってこられる場所”としての関係を保つ
・命日や季節の行事などにあわせて、施設からのご案内や交流の声かけを行う
・定期的に“ご家族対象の会”を設け、卒業された方も含めた関係づくりを続ける
・「施設との関係が切れなかったことが救いになった」という声が、次の信頼につながる
“看取り後支援”がもたらす施設の価値
・ご家族にとって“かけがえのない記憶”になる
→ 「あの時のスタッフの言葉が、心の支えになった」と振り返られる施設に
・口コミや紹介が“感情の記憶”をベースに広がる
→ 入所検討中の家族にとって「最期まで安心できる場所か」は大きな判断軸になる
・職員にとっても“ケアの意義”を再確認できる
→ 見送るプロセスを丁寧に振り返ることで、仕事の意味や誇りが深まる
看取りのよくある課題と改善のヒント
・「忙しくて、退所後の対応が手薄になりがち」
→ 看取り後の対応フローをルーティン化し、役割分担とスケジュールに組み込む
・「対応が職員によってバラついてしまう」
→ “お別れ支援ガイドライン”を設け、全職員に考え方を共有しておく
・「ご家族と連絡が取りにくい場合もある」
→ 連絡手段は複数確保し、「いつでも戻ってこられる空気」を発信し続ける
まとめ:“別れのあと”にこそ、施設の本当の価値がにじむ
看取りは、“介護の終わり”ではなく、“関係の終わり”でもありません。
旅立ちを見送ったあとの関わりが、ご家族にとっての「記憶の中の施設」を形づくります。
そしてそれは、“あの施設でよかった”という信頼の最終到達点でもあるのです。
静かだけれど確かなブランディングは、こうした“心に残るケア”から育っていきます。
別れに寄り添う文化を、これからの“選ばれる施設づくり”の柱にしていきましょう。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。