防災力のある施設は、“信頼される施設”でもある
入居者本人にとってはもちろん、家族や地域にとっても、介護施設は日常と命を預ける場です。そのため、「災害時にどれだけ安全に、安心して過ごせるか」は、施設選びの大きな基準になっています。
近年では、見学時に「災害対策はどうなっていますか?」と尋ねる家族も増えており、防災力=施設の信頼力=ブランド力という認識が広まりつつあります。
本記事では、「災害に強い施設」がなぜ“選ばれる施設”になるのか、その理由と取り組みの方向性を考えます。
災害に強い介護施設が“選ばれる理由”とは?
01.入居者の命と生活を守れるかが、家族の最大関心事
・高齢者は避難や対応に時間がかかるため、施設の対応力がダイレクトに生死に関わる
・「建物は安全か」「備蓄はあるか」「家族に連絡は来るか」など、家族の目は厳しくなっている
・事前説明や発信を通して、“備えている安心”を届けることが重要
02.職員が安心して働ける=ケアの質が保たれる
・災害時にパニックにならない訓練や、家族の安否確認制度などが整っていれば、職員も安心して行動できる
・働きやすさがそのまま、利用者への丁寧なケアに直結する
・採用や定着の観点でも、「災害時に守られている職場かどうか」は若手職員の注目ポイントに
03.地域との共助体制が、“信頼の見える化”につながる
・自治体、近隣施設、消防などと連携した訓練や協定があると、施設の存在感と信頼感が高まる
・地域防災マップやSNSでの発信などを通して、施設が“地域に貢献している姿”が可視化される
・「自分の親を預けるなら、あの施設」という評判づくりにもつながる
信頼される防災力を“施設の価値”として発信するには?
・見学対応の中で、防災対策を説明する時間を設ける
→ BCPや備蓄内容、災害時の連絡体制をわかりやすく説明できるスタッフ体制を整える
・ホームページやパンフレットで、備えの内容を見える化
→ 備蓄品リスト、訓練の様子、災害時の実績などを写真・図で伝えると安心感につながる
・「防災=理念の実践」であることを言語化する
→ 「私たちは最期まで暮らしを支える施設です」「安全・安心はケアの土台です」など、理念と備えをセットで伝えるとブランディング力が高まる
防災対策のよくある課題と対策
・「防災対策はしているが、アピールしていない」
→ 入居希望者・家族に“伝えること”もまた安心づくり。パンフレットやホームページで特集ページを設ける
・「職員がBCPを知らない、活用していない」
→ 朝礼での1分共有、研修時のミニワーク、壁貼りのビジュアル化など、日常に織り込む工夫を
・「地域との連携が薄く、災害時の孤立が心配」
→ 地域訓練に参加したり、地元の商店や団体と「災害時協力協定」を結んだりする動きが有効
まとめ:“非常時に強い施設”は、“日常から信頼される施設”になる
災害への備えは、ただのリスク対策ではありません。それは、利用者・家族・職員・地域との“信頼の約束”でもあります。
そしてその信頼があるからこそ、「ここに任せたい」「ここで働きたい」という気持ちが生まれます。
防災を施設価値に――その第一歩は、「備えていること」をしっかり伝えることから始まります。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。