“介護の質”は“関係性の質”に比例する
高品質なケアとは、単に正しい処置や安全な対応を意味するだけではありません。
「その人を知り、その人らしく支える」という姿勢こそが、入居者やその家族の心を動かす本質です。
ナラティブケアは、“その人の物語(narrative)”を大切にしながら、個別性の高い支援を行うケア手法です。
ナラティブケアが施設に与える影響
01.本人の尊厳を大切にした関わりが実現できる
・“生活歴”や“価値観”を知ったうえでケアすることで、「扱われている」ではなく「関わってもらっている」という感覚を育む
・例:元農家の方には土の香りがするような園芸療法を、教師だった方には読み聞かせの時間を
02.スタッフの共通理解が深まり、対応の質が揃う
・ナラティブ情報をスタッフ間で共有すれば、「○○さんはこういう時に不安になる」という細やかな配慮が全体に行き届く
・新人スタッフでも、単なる業務ではなく“意味のある関わり”ができるようになる
03.家族との信頼関係が強まりやすい
・「うちの母のことを、こんなによく見てくれているんだ」と驚きと感謝を呼び起こす
・誕生日や記念日なども本人の“人生”の一部として扱うことで、家族との絆も深まる
ナラティブケア導入のステップと実践ポイント
・聞き取り項目を“生活史中心”に設計
例:これまでの職業/大切にしてきたこと/趣味/日課/苦手なこと など
・ナラティブ情報はケア記録と分けて「ストーリーファイル」として保管
・“月1回共有会議”などでスタッフ間のエピソードを持ち寄ると、チーム全体の共感力が育つ
ナラティブケアのよくある誤解と注意点
・“特別なケア”として構えてしまい、実践されなくなる
・情報を集めるだけで、行動に反映されていない
・スタッフの感情や主観に寄りすぎてしまう
→ナラティブケアは「共感をベースにした“日常化”」が成功の鍵です。
まとめ:“その人らしさ”を尊重することで、施設に信頼と温度が生まれる
ナラティブケアは、施設のホスピタリティを一段引き上げる考え方です。
決して難しいことではなく、「目の前の人に興味を持つ」「話をよく聴く」ことから始まります。
介護が“作業”ではなく“関係性”に変わるとき、入居者もスタッフも心地よい空間が生まれるのです。
この記事の監修
ブランディング・ディレクター 豊田 善久
1979年生まれ、東京都出身。学校卒業後、印刷会社で現場を経験。広告代理店勤務を経てブランディング会社であるパドルデザインカンパニー勤務。病院、クリニック、介護施設、訪問サービスなど、医療・介護業界のホームページ制作やパンフレット、リーフレット、動画制作などに多数携わる。あらゆる業種・業界への企画提案経験をもとにお役立ち情報を発信しています。
東京港区のブランディングカンパニー
パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。